主な症状は、くしゃみ・鼻水・鼻つまりです。アレルゲン(アレルギーを引き起こすもの)が鼻の粘膜に触れると、身体ではそれを異物と認識して、排除しようとします。普通の人では異物でなくても、アレルギーのある人では異物と認識してしまうのです。その排除の仕方が、アレルギー症状となって出てきます。くしゃみは異物を掃き出し、鼻水で異物を洗い流し、鼻つまりで異物の進入を防ぐのです。
一年中症状のあるものは、ダニやハウスダストに原因のある通年性アレルギーとよばれるもので、気管支喘息やアトピー性皮膚炎を合併することがあります。
一方、花粉が原因で起こるものは花粉症とよばれています。日本人ではスギ花粉が原因の人が多く、国民の5人に1人は花粉症で、国民病とまで言われています。スギは2~4月、ヒノキは3~5月、カモガヤは5~7月、ブタクサ、ヨモギは8~10月と、花粉症の原因も様々です。 診断は血液検査で、血液中の抗原に対するIgE抗体を調べれば何にどの位の強さのアレルギーがあるかが分かります。結果が出るまで、1週間程かかります。
*当院では指の先から数滴血を採り、20分後に結果が出るアレルギーの検査(イムノキャップラピッド)も行っています。
アレルギー性鼻炎の治療
アレルギー性鼻炎の治療には、大きく3つの治療法があります。
①薬を内服する。②体質を改善する(減感作療法)。③手術的に腫れた鼻粘膜を切除する。
それぞれの治療には、利点、欠点がありますので、それぞれ説明します。
1抗アレルギー薬を内服する
- 利点
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- 薬が効けば楽になるため、手っ取り早く良くなります。
- 昔のアレルギーの薬に比べると最近の薬は、眠気の副作用が少なく、しかもある程度高い効果を出す薬が出ています。
- 欠点
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- 症状がひどい方には薬だけでは完全に症状を抑えることは難しいです。強い薬を出すと、薬の副作用である眠気が出てくる可能性が高くなります。
2体質を改善する(減感作療法)
*当院ではスギとダニの減感作を行っています。皮下注射で行う方法と、舌下に薬剤を数分保持してから飲み込む方法の2種類が選択できます。
- 利点
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- 体質が完全に変わればアレルギーに悩まされることはなくなります。唯一アレルギーを完全に治す可能性のある治療です。完全に体質が変わる人は約2割、あとの5割の方は、体質は完全には変わりませんが、薬の量を減らせたり、アレルギー症状が出にくくなります。しかし、まったく効かない方も3割います。今の医学では、どの方が減感作療法無効かを、事前に検査することはできません。一般に、大人よりも小児の方が有効と言われています。
- 皮下注射の欠点
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- 外来でその人にとってのアレルギーの元(スギやハウスダスト)を腕に注射し、その量や濃度を少しずつ増やしていく治療です。そのため、注射の時少し痛いです。
- その人にとってのアレルギーの元を直接注射するので、最悪の場合、急に血圧が低下したり、呼吸ができなくなったり、といったショック症状(アナフィラキシーショック)を起こすことがあります。
- 治療の全工程に約3年かかります。最初の2ヶ月は週に2回、次の2ヶ月は週1回、次の2ヶ月は2週間に1回、あとの2年は月に1回の通院が必要となり、根気がいります。すぐに効果が出てきませんので、途中で諦めないことです。
- 舌下の欠点
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- 注射と異なり痛くはなく、頻回の通院も必要ありませんが、最低3年間は毎日内服する必要があります。注射よりもアナフィラキシーショックを起こしにくいです。
3手術的に腫れた鼻粘膜を切除する
*当院ではアルゴンプラズマによる鼻粘膜焼灼術を行っています。
- 利点
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- 薬が効きづらかったり、内服で眠気ばかり出てしまって困っている方でも手術すれば鼻つまりが軽減します。当院で行っているアルゴンプラズマは、レーザーと異なり、5分で終わるため、痛みや出血は少ないです。ただし、実際に手術をしている時間は5分ですが、麻酔のガーゼを鼻内に20分入れてから5分で手術、その後出血してないか確認するのに20分かかるため、全工程約1時間かかります。
- 欠点
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- 薬と同じで、一生もつ訳ではなく、アレルギーの強さにもよりますが、アレルギーの強い方はもっても2~3年、場合によってはそのシーズンだけでしか効果が持続しないことがあります。しかし、何度手術しても悪くはないので、再手術することは可能です。
- 手術後、4~5日は鼻が逆にひどくなります。手術した鼻内にかさぶたが付くため、くしゃみ、鼻水、鼻つまり、が手術前より一時的に悪化します。それを過ぎると徐々に良くなっていき、約1ヵ月で鼻はかなり楽になります。
- 鼻つまりはよくなります。しかし、体質を変える手術ではありませんので、くしゃみ、鼻水は半分位になりますが、完全に止まるわけではありません。
*鼻内のかさぶたを取る処置に週1回 合計4回通っていただく必要があります。
4舌下免疫療法
アレルギー症状を引き起こす原因物質であるアレルゲンを少量からはじめ、その後長期にわたり一定量を服用することで、身体をアレルゲンに慣らし症状を抑え、アレルギー体質を徐々に改善していく治療法です。
約3年を目安に毎日服用することが必要となります。
舌下免疫療法のシダキュアを新規で開始されたい方は、まず一般診察をして頂きます。舌下免疫療法のシダキュアの入荷が困難となっております。シダキュアが適応となった方は、月初めに当院に電話していただき、当院で確保できている人数分を先着順で予約させて頂くかたちとなります。今年確保分の在庫がなくなりましたら、お断りさせていただきます。確保数が決まり次第、予約を再開させていただきます。ご迷惑をお掛けしますが、宜しくお願い致します。
- 適応となる要件
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- 舌下に薬剤を1〜2分保持できる方
- 血液検査でハウスダストまたはスギ花粉に対するアレルギーが証明されている方
- 月に1回程度の受診ができる方
- 副作用について
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安全性は高いとされていますが、以下の副作用が起こる事があります。
- 口の中のかゆみ、腫れ
- 喘息発作
- アナフィラキシーショック(じんましん、かゆみ、くちびるの腫れ、呼吸困難、血圧低下、意識障害などの重度のアレルギー症状)
治療可能かどうか問診と検査で判断し、必要な説明を受けていただいた上で開始となります。
スギの舌下減感作の治療は、スギ花粉の飛散時期(2月から4月)は開始することができませんのでご注意ください。
1回目の投与は必ず医院で行い、投与後30分は必ず医院に留まっていただき、副作用が現れないか様子をみます。このため治療希望の際は時間に余裕をもってご来院下さい。
5ヒスタグロビン注射による
花粉症治療
- ヒスタグロビンとは
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- ヒスタグロビンとは、ヒスタミンと免疫グロブリンを合わせた薬の事を言います。
- ヒスタグロビンは、国内の献血血液から製造されて、1967年に発売されて以来一度も感染症をおこした事のない安全性の高い治療薬です。
- ヒスタグロビン注射は「非特異的減感作療法」と言われ、アレルギー原因物質を直接体内にいれる「特異的減感作療法」とは異なり、アレルギーの原因に関係なく様々なアレルギー症状の改善に効果が期待できます。
- 効能・効果
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- 気管支喘息
- アレルギー性鼻炎(花粉症、ダニ・ハウスダスト等)
- アレルギー性皮膚疾患(蕁麻疹、慢性湿疹、アトピー性皮膚炎)
- 血管運動性鼻炎
等の疾患に有効で、有効率は50%~70%と言われています。
- 適用
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- ヒスタグロビン注射の希望者は、週に1~2回程度の間隔で受診していただき、3週間続けて接種することで効果が期待出来ます。通院が困難な場合は、効果が不十分になってしまいます。
よって原則、毎週通院していただける方が対象になります。 - 月経前、月経中の方はアレルギー症状が強まる為、ヒスタグロビン注射は実施出来ません。
生理周期のタイミングを考えると、注射の時期を合わせるのは困難なので、男性の方が向いている治療といえます。 - 効果には個人差があるので、治療した全ての方に同じ効果があるわけではありません。
- ヒスタグロビン注射の希望者は、週に1~2回程度の間隔で受診していただき、3週間続けて接種することで効果が期待出来ます。通院が困難な場合は、効果が不十分になってしまいます。
- スケジュール
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- 花粉症・アレルギー症状の出現の1ヶ月前の時期に合わせて、まずは1クール(1回/週 × 3週間)接種をおこないます。
- それでも症状の改善が見込まれない場合は、さらに続けて1クール(1回/週 × 3週間)接種をおこないます。
- その後も症状の改善を望む場合は、3ヶ月後に1回のみ接種を行います。そのあと3ヶ月後、1回接種と繰り返していきます。
- 継続後、また花粉症・アレルギー症状の出現1ヶ月前の時期に、1クール(1回/週 × 3週間)接種を行い、症状の改善が見込まれない場合は、 さらに1クール(1回/週 × 3週間)の接種を行い、その3ヶ月後に1回接種と、それを繰り返します。
- 副作用
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- 眠気
- 眩暈
- 頭痛
- 嘔気
- 蕁麻疹
- 腹痛
- 発熱
- 注射部位の疼痛,発赤,腫れ
- ショック
等が稀にあります。
- 禁忌
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- 過去にヒスタグロビン注射を打ってショックの既往歴がある方
- 喘息の激しい発作がある方
- 月経前後の方
- 妊娠中、妊娠の可能性のある方
- 衰弱されている方
- 注意
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- 生ワクチン注射(麻疹・風疹・おたふくかぜ・水疱瘡)の効果獲得に影響を与える可能性があるので、ヒスタグロビン注射を打ってから生ワクチン接種する場合は最低3〜4ヶ月あける必要があります。
- ヒスタグロビンの治療を受けたことがある患者さんは献血が出来なくなります。
6ゾレア
鼻水・鼻づまり・くしゃみ・目のかゆみなどの症状を引き起こすアレルギー反応のおおもとであるIgEとマスト細胞を結合できなくすることで症状を強力に抑えることができる注射薬です。
- ゾレアを受けることができる条件
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- 重症または最重症の季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)で、前スギ花粉シーズンでも重篤な症状があった(過去の治療内容や症状により判断されます)。
- スギ花粉症のアレルギー検査結果(血液検査)が陽性(特異的IgE抗体がクラス3以上)。
- 季節性アレルギー性鼻炎の既存治療を1週間以上行い効果が不十分。
- 12歳以上で、血清中総IgE濃度が30~1,500IU/ml、体重が20~150㎏の範囲にある。
※妊娠中又は授乳中の方は、医師に相談が必要です。
※IgE濃度が高すぎる方は投与量が増えすぎるので投与できません。
※体重がより重い方は総IgE濃度が1,500IU/ml以下でも必要投与が限界量を超えてしまい投与不可となることもあります。
程度および重症度 | くしゃみ発作または鼻漏 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
++++ 21回以上 |
+++ 11〜20回 |
++ 6〜10回 |
+ 1〜5回 |
− +未満 |
|||
鼻 閉 |
++++ | 1日中完全につまっている | 最重症 | ||||
+++ | 鼻閉が非常に強く口呼吸が1日のうちかなりの時間ある | 重症 | |||||
++ | 鼻閉が強く口呼吸が1日のうちときどきある | 中等症 | |||||
+ | 口呼吸は全くないが鼻閉あり | 軽症 | |||||
− | 鼻閉なし | 無症状 |
- ゾレアを始めるにあたっての流れ
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始めるまでに3~4回来院していただく必要があります。スギ花粉が飛ぶ2~4月に投与する治療ですので、花粉の本格飛散が始まる前に早めに受診されることをおすすめします。
スケジュール例
- 〇1回目受診
重症花粉症と診断(鼻水・鼻づまり・くしゃみなどの症状の程度をみて医師が診断)
特異的IgE抗体検査(これまでに未実施の場合)
既存治療を開始(抗ヒスタミン薬・点鼻薬等) - 〇2回目受診
既存治療で効果不十分なスギ花粉症であると診断
総IgE濃度検査(未実施の場合) - ゾレアの投与量、投与間隔、自己負担額、開始日の決定(発注してから2日ほどかかります)
- ゾレア投与(経過確認の為、初回のみ投与後15分院内で待機)
- スギ花粉症シーズン中(概ね2~4月)に、2週間または4週間毎に投与(投与間隔は血清中総IgE濃度および体重に基づき決定されるため患者さんごとに異なります)
- 〇1回目受診
- 費用について
薬剤費のみで1ヶ月あたり、3割負担で約4,500~70,000円です(血清中総IgE濃度および体重に基づき異なります)。自治体によってはこども医療費などの医療費制度が受けられます。また、ゾレアに関する治療費について高額療養費制度が受けられる場合があります。
薬剤費や高額療養費制度について詳しくはhajimete-xolair.jpのページをご覧ください。- 副作用
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- 注射部位の赤みや腫れ
- アナフィラキシー(呼吸困難、蕁麻疹、全身のかゆみ、失神、唇・舌・喉の奥の腫れ・血圧低下)